『不祥事』池井戸潤
| 不祥事 (講談社文庫) | |
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メガバンクの女子行員花咲舞が銀行内の様々な「不祥事」にぶつかり、解決いていく短編集。
銀行出身の作者らしく、銀行内の描写や業界独特の用語やしきたりはとてもリアリティがあり、業界外の自分にとっては興味深かったです。
メガバンク本部調査役で臨店指導を担当する花咲舞は、高い職務能力と持ち前の正義感・行動力を併せ持ついわゆる「デキる社員」であると同時に、とんでもない「トラブルメーカー」。
直属の上司である相馬からは「狂い咲」とあだ名をつけられるほどであるが、そのまっすぐな性格でたとえ時期頭取候補のスーパーエリートたちにも真正面からぶつかり、鮮やかに問題を解決していく様子はとても通快。
花咲舞が担当する「臨店指導」とは、なんらかのトラブルを抱えたり業績の悪い支店に直接乗り込んで指導し業務改善を行う部署なのですが、そういう業務が銀行内にあるということは知らなかったので興味を持ちました。
でもサービス業で支店を多く抱える大企業などはこういう部署もあるんだろうなぁ。
花咲舞は元々はテラー=銀行窓口の担当だったようですが、高い能力を買われて臨店指導担当になった模様。
作中の描写では20代半ばと思われますが、その若さで支店を廻り自分よりも年上の社員もいるであろう支店の指導に当たるってすごいなぁ~。
でも本書の中でも語られていますが、銀行の女子行員って、数年でベテランと呼ばれる世界、どの業界もそうだと思いますが、男性社員が結構長いスパンで勝負できるのに比べ女子社員は入社して数年が勝負。
この法則でいくと、10年以上働き続けている自分なんて化石だな。
その他にも、一般職と総合職、正社員と派遣社員というここ10年くらいで顕著になってきた女子社員同士の中の格差によるギスギスした感じなんかも、すごくよくとらえられているなと思いました。
ほんと、この辺の問題は今どこの会社も抱えている問題だと思います。
それから男性社員同士の壮絶な出世レースやいじめ、嫉妬などというのもきちんと描かれていました。
女性社員の短期決戦も怖いですが、男同士の足の引っ張り合いや一度レースから脱落した者の人生台無しっぷりというのは本当に恐怖。
のほほんと仕事をしているように見える日本の大企業戦士たちも、実際は細いロープの上を歩いているようなギリギリのせめぎあいなんだよなぁと改めて思いました。
こんな不祥事だらけの銀行なんてイヤだ!と思わなくもないですが、とにかく花咲舞の正義感と猪突猛進ぶりは読んでいてスカっとします。
短編集ということで読みやすいし、勧善懲悪ですっきり終わるこの本、楽しませていただきました。
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