« 『卑弥呼の赤い罠』吉村達也 | トップページ | 『更年期少女』真梨幸子 »

2011年8月14日 (日)

『吉原手引草』松井今朝子

吉原手引草 (幻冬舎文庫) 吉原手引草 (幻冬舎文庫)
松井 今朝子

幻冬舎 2009-04
売り上げランキング : 9287

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

直木賞受賞作。
忽然と消えた花魁葛城の行方を追う男が吉原に潜入し、周囲の人々へ聞き込みをして葛城の人となりや事件の真相を探っていくというミステリー形式の歴史小説です。
追う男の正体もよくわからないまま、しかも葛城をめぐるどんな事件があったのかさえわからない状態で物語りは進んでいきます。

男が聞き込みをしているという体なので、すべて相手の話し言葉で進行して行きますが、これで作品が成立するという文章力がすごいです。
最近読んだ森見登美彦の『恋文の技術』などもそうでしたが、一人の語り口調だったり手紙による文章だったり制約がある中でストーリーが浮かび上がらせるという形式は作家の力量がないと読ませられないと思うので。

さて、このヒロインは一言も発しないし、作品中一度も姿を現しませんが、いろんな人の葛城像から彼女の人となりは浮かび上がってきます。
美貌と才覚に恵まれ、吉原の花魁という籠の中の鳥の立場であっても自分の本願を達成するまでは決して怯まず絶望せず、誇り高く生き抜いた魅力的な女性で魅了されました。

作者は歌舞伎をはじめ江戸時代の風俗に非常に造詣の深い方なので、時代考証もしっかりしていてその点は作家を信頼して安心して読み進めることが出来ました。
設定がしっかりしていると、登場人物たちもより生き生きしているような気がします。
吉原についてはそれほど詳しくない読者でもわかりやすいように、インタビュアーの男が吉原初心者の設定とし、周囲の人々が懇切丁寧に吉原について説明してくれるのでとてもわかりやすく、すんなり作品世界に没頭することが出来ました。こういう設定も作家の力量を感じられるところだなぁと思いました。

やはり時代小説、特に江戸時代は面白いですね~
ほんの数百年前、日本人がどういう暮らしをし、矜持を持って生きていたか、葛城の「覚悟」のようなものからも感じ取ることが出来ます。
今回の作品も、葛城がある意味女助六といってもいいような立場のため、歌舞伎のあの華やかな「助六」の舞台を思い出すことが何度も。
実際に歌舞伎の舞台にすると面白いんじゃないかなぁ~なんて思いましたが、立女形=葛城が最後まで姿を見せないのでやはり無理でしょうか(笑)。

|

« 『卑弥呼の赤い罠』吉村達也 | トップページ | 『更年期少女』真梨幸子 »