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2008年8月10日 (日)

『百万円と苦虫女』

『百万円と苦虫女』

家族と同居しながらフリーターとして働く鈴子は、バイト仲間の誘いでズルズルとルームシェアすることに。だがそこでのトラブルから「前科持ち」になることに。住んでいる町にも実家にも居場所のないと感じる鈴子は、ある決意をする。「百万円貯めたら出て行きます!」と。
そしてバイトと節約生活に励んでついに百万円貯めた鈴子は、手作りのカーテンとわずかな着替えをキャリーケースに詰め、住み慣れた家を、町を出て行き、「自分を探さない旅」に出る。

ネタバレの可能性があります!!

「木を隠すなら森の中」
映画を観ている最中、なんとなく浮かんできたこの諺。

貯金通帳に百万円貯まるたびに、自分のことを誰も知らない土地へ移るという、根無し草な生活を自ら選び実行している鈴子。(実際には百万円達成できたのは最初の海編だけなような気がしますが・・・)

とにかく、人間関係に不器用な鈴子。
「前科持ち」になってしまったり放浪の旅に出てしまうあたりは映画らしく突拍子もない行動ではありますが、人に強く誘われると拒否できないあたりや、積極的に好意を寄せられるとちょっと距離を置いてしまうあたりなんてのは、多くの人が共感を持つんじゃないでしょうか。
反対に、誰とでも仲良く出来たり、グループのリーダーとかになってしまうタイプには、鈴子の行動は理解できないかもしれませんね。
私は圧倒的に前者タイプのため、鈴子が誰かと関わるたびに苦虫を噛み潰したような顔になってしまう気持ちはすごーくよくわかりました。
蒼井優さんの台本の読解能力とそれを芝居に反映できる演技力の高さも、同時によーくわかりましたが。

最初はありがちな感じで海水浴場の海の家での住み込みバイト。
海の家を経営している家族と親しくなり始め、常連の男の子に好意を持たれ始め、なんとなく居心地が良くなってきた頃にスパッと出て行くんですが、こういう人間関係に不器用なあたりは自分としてはなんだかわかるなぁ~なんて共感してしまいました。
私自身、学生時代はレギュラーのバイトではなく、休みに短期バイトを集中的にしていたせいかも知れませんけど。

次に向かったのは田舎の山間部の農村。
海の家ときて農家の収穫手伝いとは、比較的な高収入の期間バイトをよく心得ているなぁ~なんて思ったのですが、実際は行き当たりばったりだったようで、山の中のバス停の近くで喫茶店を営むおっちゃんの世話好きっぷりでなんとか桃畑での住み込みバイトをゲット。

喫茶店のおっちゃん(白石さんだったっけ?)役の笹野高史さんがいい味出してました~
いるいる、こういう喫茶店のマスター(笑)、そして世話好き(詮索好きともいう)おっちゃん。
村の集会でのマイク使いにも大笑い。私は思わず「フフッ」って笑ってしまったのですが、周りの人はシーンと無反応。ちょっとお調子者なところも垣間見える名演技だと思うのですが。。。ちょっとした仕草にも人物造形を織り込む笹野さんの一貫した役作りには脱帽です。それでいて作品の世界観やメインの俳優の芝居を邪魔することもなく、さすがだなあ~と思いました。

この「山あいの村にて」は地味でちょっと辛い内容だったのですが、俳優さんたちの演技はどれもレベルが高くて見入りました。
佐々木すみえさんの桃農家のおばあちゃん、本当に田舎の人のいいおばあちゃんの仕草そのもの!「篤姫」の武家に仕える厳しくも忠義深い乳母とは同一人物とは思えませんなぁ。
その息子役のピエール瀧さんも、朴訥とした中にも親切で優しいところが垣間見える農家の男性にしか見えない!いろんな引き出しを持っている人です。

村の集会の場面は見るのが辛い場面ですが、都会の人、田舎の人双方のダメな部分を浮き彫りにしているシーンだと思います。そして、この経験を通して自分の思っていることは、ちゃんと言わなきゃ伝わらない、ということを鈴子が分かったという点でも重要な場面。終盤の鈴子の行動にも影響しているように思います。

そして「地方都市にて」編。
ブログの冒頭に「木を隠すなら森の中」と書きましたが、人と関わらず、誰にも関心をもたれず生きていくにはこういう都市部が一番なんだなぁと思いました。誰かに追われることになったら、私も都会に行こう(??)

中島役の森山未來。植物好きな癒し系→不器用だけど一途な純情青年→鈴子を利用してる?な悪い男→やはり不器用だけど一途な純情青年・・・と、なんか印象がどんどん変わっていく男の子を自然に演じてたと思います。
中島も鈴子に負けず劣らず不器用。。。っつーか不器用すぎて、なにやってるんだよ~と言いたくなる(笑)。

その他の出演者では、やはり鈴子の弟役の少年が素晴らしかった!
小憎たらしい(笑)感じもぴったりで、その一方で健気な感じもあって、ストーリーにぴったりきてました。

しかし、不器用ぞろいの大人たちの中で、この鈴子弟が一番立派ですね。
彼の最後とった行動が正解かどうかは分からない、でも地に足をつけて今を変えていこうとする姿は、非常に真っ当な生き方だと思いますね。

鈴子のように新天地を求めることも、弟のように今いる場所にとどまる事も、どちらも正解なんだよなぁ~と、今いる場所から逃げることも、そこで闘うこともする勇気のない一般市民な私は感じました。

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