『ブロークバック・マウンテン』
カウボーイ達が次第に仕事の場を追われつつあった1960年代のワイオミング州ブロークバック・マウンテン。季節労働者として仕事を求めて来たイニスとジャックは、夏の間放牧している羊を監視し山に野宿するという過酷な労働をすることとなる。寡黙なイニスと奔放なジャックという正反対な二人は、最初はギクシャクするが次第に心を通わせていく。硬い信頼関係に結ばれた友情は次第に愛情に変わっていき、ついに世間的に許されない関係を結ぶ。やがて山を降りてからは互いの所在もわからないままそれぞれ結婚し子どもにも恵まれるが、4年後のある日一通の手紙から二人は再会する。以来、20年間に渡り二人の密かな関係は続くが・・・
アカデミー賞3部門受賞などでも話題になったこの作品、昨日ファーストデーということもあって見てきました。
ホモのカウボーイという、なんともハードな設定(笑)ということでついていけるかかなり心配でしたが、美しい景色と男前の俳優、そして性別を超えた切ないラブストーリー、予想以上によかったです。
50年近く前のアメリカ西部の田舎町が舞台。
封建的かつ閉鎖的な環境では男同士の恋愛が許されるわけもなく、そんな中で二人は葛藤しながら命がけの恋を20年間も続けることとなる。
どちらかというとイニス目線で描かれているこの映画。
厳格かつ保守的な父親に育てられてきた彼は、自分は男を愛しているということがなかなか受け入れられない。周囲にばれるのではないか?という恐怖心、家庭への不満、自分と違い経済的に裕福な暮らしをしているジェイクへの嫉妬、そして背徳感という、いろんな葛藤を背負いながらも心の底では誰よりもジェイクを愛している。
そういう複雑かつ激しい、内に秘めた情熱を、ヒース・レジャーは静かに演じていました。
聞き取れないくらいのモソモソしたしゃべり方も、彼の田舎モノらしい朴訥とした人柄が出ていたりしました。見た目や人物像を含め、役作りをきちんとやる人だなぁ~と感心。
一方のジャック。登場シーン、カウボーイ姿で車にもたれかかる姿の美しさ(笑)。
まばたきするたびにバッサバッサと風が起きそうなほどのまつげに大きな瞳に見つめられたら、そりゃ男でも惚れるでしょう~と思ってしまった私はジェイク派(?)。
男らしさを出しながら、視線などはゲイっぽい色気があり、この辺もお芝居がうまいなぁと思いました。
自分がゲイであることを受け入れられず葛藤するイニスに対し、自分の性癖を自覚した上でイニスを一途に愛するジャック。イニスに拒絶され涙を流しながらメキシコに向かうなど、感情に任せておおらかに生きているように見えますが、死後火葬を希望しているあたり、彼も自分の性癖やイニスとの関係に苦しんでいたのでしょうか。彼もまた、自分の感情と理性の間で葛藤していたのでしょう・・・
終盤、二人が近況を話している時。イニスは若い彼女がいることを報告し、ジャックも農場主任の奥さん(パーティにいた、ペラペラよくしゃべるあの奥さんのこと??)と不倫しているとあっけらかんと話す。そういう女性との浮気??にはおおらかに笑っているお互いですが、ジャックがメキシコに行って男を買ったと知った途端、嫉妬に狂って殴りあいになってしまう。イニスは女との関係は許せても男とのそれは許せないってことでしょうか?このあたり、二人がお互いに求めているところの違いが見えるようで興味深かったです。
終盤に向かって二人には過酷な運命が待っていますが、ラストはしみじみとしたおだやかな余韻がありました。
嫁ぐ娘の結婚式を想像しながら、自分とジェイクのことを重ね合わせるように誓いの言葉を口にするイニス。ブロークバックマウンテンでの思い出を胸に一人で生きていくであろう彼が切ないです。
冒頭にも書いた「ホモのカウボーイ」というみもふたもない言い方をするとどうにも我々の住む世界とは別世界のように感じますが、彼らの一途で純粋な愛情は本当に切なく、思わず感情移入せずにはいられません。
同性愛者でなくとも、たとえば遠距離恋愛をしている人とか彼女のいる人に恋しちゃった人とか、あるいは不倫中の人なんて本当に身につまされると思います。
そういうややこしい恋愛はしてないわ~という人でも、若く純粋だった頃の心に残る思い出、そしてその頃にはもう戻れないという郷愁、自分にとってのブロークバックマウンテンを思いながら映画館を後にして欲しい、そういう映画でした。
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