« キリンチャレンジカップ2006 日本vsフィンランド | トップページ | アジア杯予選インド戦 »

2006年2月19日 (日)

『亀も空を飛ぶ』

『亀も空を飛ぶ』

2003年春、アメリカ軍のイラク侵攻前のイラク北部、クルディスタン地方。
度重なる戦争やフセイン政権のクルド人迫害により厳しい生活を余儀なくされているこの地区の子どもたちは、一帯に埋められている地雷を掘り返し、国連の機関に売ってわずかな現金収入を得て生活している。そんな危険と隣り合わせの暮らしをしている子どもたちを取り仕切っているのは孤児の少年・サテライト。持ち前の知識や機転と巧みな話術で付近の大人たちにも頼りにされている。
サテライトは難民としてやってきた少女アグリンに恋をする。彼女も戦争孤児で、両手を失った兄と目の不自由な赤ちゃんの3人で助け合いながら暮らしている。ある日、この兄に予知能力があることに気づいたサテライトは、彼から「もうすぐ戦争が始まる」という予言を聴いてしまう。

各国で様々な賞を取ったこの作品。
装甲車や機関銃でドンパチやる場面があるわけではないのに、戦争の悲惨さや犠牲になる人々の悲劇を伝えている。

私は映画を見ながら、サテライト少年にアメリカを重ねて見ていました。
貧しい村の中でただ一人自転車に乗り何十人もの子どもたちを取り仕切る彼は、時に言葉巧みに大人たちと交渉してお金をもたらしたり、時に武器を入手し自分たちを護る方法を指導したりと、リーダーとして奔走する。また地雷原に入ってしまった赤ちゃんを救うために大怪我を負ったりもする。
でも、彼がいくら正義感から子どもたちのためにと思ってやったことであっても、それは地雷の掘り起こしという結果的に子どもたちを危険にさらしている事。

しかし、彼が一番大切に思っていたものは守ることができなかった。

あれほどあこがれていたアメリカがイラクに勝利し、村に米軍が入ってくる様子を、空虚な目でみつめるサテライト少年。何を考えていたんだろう?

一方、一度も笑顔を見せない、難民の少女アグリン。
彼女はやはり自分たちの国を持たず、迫害され蹂躙され続けているクルド人の象徴なのでしょうか。いや、そうだとするとあまりにも救いようのない結末は耐え難い。
あまり書くとネタバレになるので控えますが、どうみても10代前半の彼女の背負った過酷な運命はあまりにも重く、戦争や民族紛争など大人たちの問題を一身に受け犠牲になっているかのよう。そして彼女の選んだ結末はあまりにも悲惨である。

アグリンの兄ヘンゴウ、彼もまたクルド人虐殺により両親を失い、地雷により腕を失い、そして自分たちにとって悲惨な未来を予言してしまうという過酷な運命を背負った少年である。しかし彼は不自由な体ながら必死に生きている。家族を愛し、命の大切さをよく分かっているある意味一番「大人」な人間。何度も過酷な運命に巻き込まれながらも立ち上がり生きている姿こそ、クルド人の象徴なのか?と思いました。

テーマは重く、結末も悲惨で引きずってしまうストーリーなのですが、一方でイラク北部の圧倒的な自然、劣悪な環境の中でもたくましく生活している人々の様子は見ごたえがあり、映画として楽しめます。ぜひ、大勢の人に見て欲しい映画です。

ちなみにこの映画の上映前、バイオリニストの上野さんという方の演奏でクルドの曲が披露されました。世界で演奏活動をすると同時に、中東の子どもたちの教育を支援する活動もされているということで、その一環としてミニコンサートを行ってくださったとの事。
もの哀しい調べの中にも力強さがあるクルドの曲は、なんとなく日本の民謡にも通じるものがあり、妙に懐かしさを感じました。
素敵な企画に心に残る映画、有意義なひとときを過ごすことができました。

|

« キリンチャレンジカップ2006 日本vsフィンランド | トップページ | アジア杯予選インド戦 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『亀も空を飛ぶ』:

« キリンチャレンジカップ2006 日本vsフィンランド | トップページ | アジア杯予選インド戦 »